山田ガーデン

花や葉から、種まきから球根から。心地よい庭を作り上げる喜び。庭作りから学ぼう。

つまらない毎日


朝起きると、しとしと雨が降っていた。
嬉しい物件の契約日のはずだったが、前日ドタキャンされたため、予定のないただの休日になった。


そりゃあショックだった。新しい家にはどんな表札を付けようか選んでいた最中だったし、郵便ポストだって何色がいいか、カーテンは薄手の生地で遮像のものにしよう、とか、庭木を整理するためチェーンソーを借りる手配も進めていた。
室内ドアはペンキを塗って、トイレの床もオシャレなクッションフロアシートを貼り直そうと決めていた。
これから忙しくて楽しい日々が来るはずだったのに、売主の気まぐれで人生が変わってしまった。契約前のキャンセルだから、このやるせない気持ちをぶつける先がない。不動産会社に当たるのも違うと思う。あちらも被害者だ。
またぐっと我慢して飲み込んで、消化するのを待つしかない。


謝罪と説明を受けたスタバのテーブル席は、そりゃあ重い空気だった。不動産会社の所長からは、落胆と怒り、疲労している様子が伝わってきた。私はその頃には落ち着いていたので、大変そうだな~、今まで動いてきたことが水の泡だもんなぁ、なんて考えていた。


売買キャンセルの理由は、落ち着いて考えれば非常に身勝手で許せないものだ。何十年もそこで暮らし、思い入れがあるのはわかる。きっと売主には、売買契約前日にすべてをめちゃくちゃにかき回してでも売りたくないほど、あの家に強い思い入れがあったのだろう。そして代理人である娘さんは、母親のそんな思いを軽んじていたか、汲み取れていないまま売却の話を進めていたんじゃなかろうか。
私も思う。きっと娘さんは随分と母親に振り回されているんだろうな。


不動産会社の所長には伝えた。
私は2年も家探しをしてきたこと、直前で買えなくなったことが過去にもあり、再びこういうことになってとても悲しいこと。
あの家は全く別物に作り変える気はなく、売主が今まで大切にしてきたように、私も同じように大事にしてゆくつもりでいること。
職業柄、荒れた庭に手を入れて良い状態で管理し続けることができること。
私はこの地で生まれ育った人間なので、他所の手に渡ってしまったと思わずに、いつでも訪問していただいて構わないこと。
それをあちら様に伝えて、と。話はちょっと盛ってね(笑)って。
これで売主の気持ちが動くのかどうかはわからないけれど、私もハイハイそうですか、と引き下がれない思いがあるので。


またふりだしに戻って、つまらない毎日が続く。庭は随分とほったらかしのままだ。